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クルマのハーマン | カー・オーディオ Part 1 |

レクサスで極上の音楽を奏でる、マークレビンソンのサウンドシステム。

Hi-Fiオーディオのハイエンドブランドであるマークレビンソン、そしてスピーカーの名門JBL、ハーマンカードン。これらハーマンインターナショナルが擁するオーディオブランドが、実はカーオーディオとして多くのクルマに採用されていることはご存じでしょうか。「クルマのハーマン」第1回は、カーオーディオとは何か、そしてレクサスのカーオーディオとして採用されているマークレビンソンについて、カーオーディオのエンジニア辻多久也がお話しします。

ハーマンインターナショナル株式会社 アクースティック システム プリンシパル エンジニア 辻 多久也

ハーマンインターナショナル株式会社
アクースティック システム プリンシパル エンジニア
辻 多久也

Q:HARMANの製品がカーオーディオとして多くのクルマに採用されていることをご存じない読者も多いと思います。まずはカーオーディオの事業の概要を教えてください。

辻:ハーマンインターナショナルはマークレビンソン、JBL、ハーマンカードンなどのブランドでカーオーディオを生産しており、世界的にはかなり大きなシェアを持っています。国内で搭載されている代表的なクルマとしては、レクサスがあげられます。レクサスでは全車種においてマークレビンソンがメーカーオプションとして選択可能となっています。JBLはトヨタ車で、主に北米向けの車種で採用されていますが、日本で国内展開されているクルマでは、プリウスとハリアーのメーカーオプションとして提供されています。また、スバルのレガシィ アウトバック・B4とフォレスターにはハーマンカードンを提供しています。

Q:マークレビンソン、JBL、ハーマンカードンは、いずれもオーディオの世界で有名なブランドですが、これらはそれぞれ目指すサウンドが違うのでしょうか。

辻:音を言葉で表現するのはとても難しいのですが、我々が目指す音のゴールはマークレビンソンで言えば「原音再生」です。「原音再生」と言うと、どのオーディオでも同じではないかと思われるかもしれませんが、マークレビンソンにおける「原音再生」とは、CDやDVDの音をそのまま再生するだけではなく、そこに込められたアーティストや録音エンジニアの思いをそのまま伝える、ということを目指しています。これはつまり映画やライブに行って受ける感動、それと同じ感動をオーディオで与えるということなんです。これは本当に、究極の音ですよね。それを目指すのがマークレビンソンです。
その一方でJBLは「ラウド・アンド・クリア」と形容しています。ダイナミック感があり、しかもクリアできれいな音です。またハーマンカードン は、「ピュアサウンド」という言葉がふさわしいと思っています。

レクサスのボディーに搭載されたマークレビンソンのスピーカー。

レクサスのボディーに搭載されたマークレビンソンのスピーカー。

クルマという過酷なリスニングルーム

Q:どのブランドもホームオーディオの世界ではHi-Fiオーディオとして高い評価を得ています。そのサウンドを、カーオーディオで実現するのは、大変なのではないでしょうか。

辻:カーオーディオというリスニング環境には、ホームオーディオとは全く異なる特殊な要件がたくさんあります。まず第一にクルマは小さな閉鎖空間であるということ。第二に左右非対象、つまり聴く人がスピーカーの正面では聴けないということ、そして三つ目はスピーカーを設置する場所などのセッティングを一切変えられないことです。

Q:かなり過酷なリスニング環境のようですね。すこし詳しくご説明いただけますか。

辻:ご存じのようにクルマは非常に小さな密閉空間であり、シートなどのよく吸音する素材とガラスのように反射率が極端に高い素材が混在しています。また、ご家庭でオーディオを聴く時のように、スピーカーの正面で音楽を聴くことができません。お客さまは運転席、助手席、後席など、バラバラな場所で音楽を聴くわけです。これは音響的には非常に厳しい環境です。しかも音が聞こえにくいからといって、スピーカーの向きや位置をお客様が調整するといったこともできません。

Q:たしかにドライバーも助手席も、真正面からズレた場所に座りますね。これはどうやって補正するのでしょうか。

辻:DSP(デジタルシグナルプロセッサー)を使い、主に位相、ディレイ、イコライザーなどをチューニングします。ディレイはタイム(時間)、フェーズは位相、イコライザーは再生帯域を調整します。またスピーカーの設置場所と角度も重要です。耳の高さに設置できないスピーカーも多いので、車内のガラスの反射角度までも吟味しながら搭載設計を行います。

運転席に設置された音響測定用のマイクロホン。背の高さ、シート位置ごとに3対のペア、計6本のマイクを使用する。

運転席に設置された音響測定用のマイクロホン。背の高さ、シート位置ごとに3対のペア、計6本のマイクを使用する。

Q:それらによって、運転席の位置でも正確なステレオ感が再現できるのでしょうか。

辻:できます。スピーカーがリスナーに近い環境をオーディオの世界では「ニアフィールド」といいますが、ニアフィールドでの再生は、設定が少しズレるだけで、音が敏感に変わってしまいます。クルマの中の音のチューニングは、非常に緻密な作業となります。例えば運転席は前後にスライドできますから、それで耳の位置は変わりますよね。もちろん身長によっても耳の位置は変わります。そのため車内の音響測定では背の高い方から低い方まで対応できるように、耳の幅でワンペアとした測定用マイクロホンを3対6本設置してデータを記録します。またドライバー席だけで完全なチューニングしてしまうと助手席側では ステレオ感が偏ってしまうということがありますので、助手席側でも同じように測定してバランスをとります。そのバランスの加減もノウハウが必要であり、難しいところです。

音作りはクルマの設計段階からはじまる

Q:クルマの設計とカーオーディオのプランニングは同時進行で行われるのでしょうか。

辻:もちろんです。新車の場合はまだクルマの形がない時点で、音に関するコンセプト提案を行います。音質や聴取場所の優先順位はクルマのコンセプトによって変わってきます。ファミリー向けであれば後席の音も重要ですし、ひとりで乗るクルマの場合にはドライバー席の優先順位が高くなります。これらによってスピーカーの台数や配置が変わってきますが、これは設計やコストに直接かかわります。 またクルマのデザインは、開発途中で変更されることもありますから、それにより、ドアスピーカーを5mm下げる、などの設計変更は日常茶飯事です。その都度、変更位置で再度チューニングを行い、場合によってはこちらから別の提案をしつつ音作りを行っていきます。そうして新車のカタログが出るころには、チューニングは全部終っていなければなりません。

Q:スピーカーは、通常何個のバリエーションがあるのですか?

辻:私たちが使っているアンプとしては8ch、12ch、16chの3種類のアンプがあります。ですからスピーカー8個がミニマムですが、レクサスのLSでは、19個のスピーカーが設置されています。

車内の音響測定結果を分析、微細な調整をしていく。

車内の音響測定結果を分析、微細な調整をしていく。

レクサスとマークレビンソンとのパートナーシップ

Q:カーオーディオというと、もう一つ気になるのは風切り音などクルマの中の雑音です。

辻:おっしゃるとおり、クルマは非常にノイジーな部屋です。しかしレクサスというクルマに関しては類い希な静粛性を実現しています。実はマークレビンソンがカーオーディオを手がけることになったのもレクサスの静粛性がきっかけでした。
もともとHi-Fiオーディオのハイエンドとして知られているマークレビンソンですが、初めてカーオーディオへの進出を検討した際、当時のCEOがプレミアムカーと言われるさまざまなクルマに乗ってみました。しかしクルマという環境はマークレビンソンのサウンドを再生するにはあまりに雑音が大きすぎる中、レクサスは突出して静粛性が高かった。あともう一点、レクサスは車両の組み付けのバラツキが極めて少なかったのも大きいです。カーオーディオの場合、ミリ単位で設計された位置にスピーカーを設置しますので、工場での組み付け精度にバラつきがあると、我々がチューニングで目指した音を出すことができません。その点レクサスは量産でのばらつきが極めて少ないクルマでした。それでマークレビンソンとレクサスのコラボレーションがはじまったのです。
レクサスとマークレビンソンのコラボが始まってすでに10年以上が経ちます。最近では他のクルマメーカーがいろんなブランドオーディオを採用していますが、プレミアムカーがハイエンドオーディオブランドとコラボするという流れは、おそらくレクサスとマークレビンソンから始まったのではないか、と思います。

Q:レクサスの場合、カーオーディオのチューニングにどのくらいの時間がかかるのでしょうか。

辻:すべての車種で車室内形状が違いますので、それに合わせて全部チューニングを変えています。レクサスのLSですと、ロング、ショートのボディサイズがあり、ショートだけでもトータルのチューニング日数で、1ヶ月以上かけています。

「ラウド・アンド・クリア」なサウンドを響かせるJBLの車載用パワーアンプ。

「ラウド・アンド・クリア」なサウンドを響かせるJBLの車載用アンプ。

マークレビンソンの車載用アンプ

音質を重視した高品位なパーツがふんだんに使用されているマークレビンソンの車載用アンプ。車内の目につかない場所に設置されるにもかかわらずマークレビンソンならではの洗練された美しいデザインが施されている。

私たちがお売りしているものは「音」です

マークレビンソン、JBLのハイエンドモデルが並ぶ名古屋オフィスの試聴室。

マークレビンソン、JBLのハイエンドモデルが並ぶ名古屋オフィスの試聴室。音作りで悩んだ時には、ここでリファレンスのサウンドを再生し、ブランドの原点に立ち返る。

Q:今日お話をうかがってカーオーディオの環境が非常に過酷であり、チューニングがいかに大変かということを知りました。

辻:おかげさまで、非常に厳しいリスニング環境です(笑)。

Q:仮に一般ユーザーが同じマークレビンソンのカーステレオのアンプやスピーカーを入手できたとしても、このチューニングの匠の技がない限り、レクサスの車内で味わえる極上のサウンドは実現できませんね。

辻:先ほどお話ししたように設置する場所や角度、そしてスピーカーごとにディレイ、フェーズ、EQなどを非常に細かくチューニングしています。ですから、恐らく同じ音は出せないのではないでしょうか。自分たちの中でよく言っているのが、「お客さまに納入するのは、アンプやスピーカーという工業製品ですが、お売りしているものは『音』です」ということ。クルマに乗るすべての方に、高品位で快適な音を楽しんでいただく。それが一番大切なことだと考えています。

レクサスLSには、19個のスピーカーを搭載した“マークレビンソン”リファレンスサラウンドサウンドシステムが採用されている。

レクサスLSには、19個のスピーカーを搭載した“マークレビンソン”リファレンスサラウンドサウンドシステムが採用されている。

次回予告 次回の“カーオーディオの開発現場の雰囲気をお感じいただけたでしょうか? 次回は、開発の仕事のやりがいや苦労など、スタッフの生の声を対談形式でお届けします。ご期待ください。

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