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HARMAN Owners' Club ハーマンオーナーズクラブ

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特集 2014.11.4UP | Artist Interview@試聴室 Vol.3

指揮者 竹本泰蔵 Taizo Takemoto

この音には、きちんと「無」がある。

クラシック音楽を中心に、映画音楽、ポップス、ゲーム音楽に至るまで幅広いジャンルで活躍する指揮者の竹本泰蔵さんが今回の試聴室のお客さまです。オーディオ好きの一面もあるとのこと。ご自身が指揮をされたCDを試聴室のサウンドシステムで再生しながら、音や音楽、そしてオーディオについて、じっくりお話をうかがいました。

Q:竹本さんが、オーディオに興味を持たれたのはいつ頃ですか。

竹本泰蔵(以下T.T.):オーディオに興味を持ったのは、FM放送で番組を持ったころです。1988年から12、3年『東邦ガス・ホームミュージック』という番組を担当しました。その時「音楽のプロとしてリスナーに音楽をご紹介するわけですから、ある程度ちゃんとした再生環境で音を聴かなければ」と思い、それなりのオーディオ機器を揃えて音楽を聴くようになりました。「この柔らかな音が……」と番組で紹介したのに、実際の放送で音が硬かったらまずいですから(笑)。

Q:オーディオの音が良くなると音楽の聞こえ方は変わりますか。

T.T:変わりました。その時に使っていたのは主に海外メーカーのものでしたが、音に対する考え方、捉え方が、全然違いました。「音」そのものはあくまで好みなので、それ自体は特には思わなかったのですが、その奥にある「考え方」が、それまで使っていた国内のオーディオとは違った気がしました。僕自身ドイツに留学していたので分かるのですが、やはり西洋人と日本人では、ものの考え方もメロディの感じ方も違うんですね。たぶん言語に由来するものだと思うのですが。それがオーディオの設計にも反映されている、ということがだんだん分かってきました。そこが面白かったです。

Q:今日は竹本さん所有のAKGのヘッドホンをお持ちいただきました。これはどういう経緯で入手されたのですか。

T.T:番組がきっかけでオーディオに興味を持つようになり、オーディオ屋さんに行くようになりました。いろいろなものを試しつつ、新しい物が出ると聴かせてもらう生活を続けていたのですが、番組の収録の帰りにいつも寄るオーディオショップでたまたま見つけたのが、このAKG「K500」でした。番組をやっていた都合上、日常的にCDをたくさん聴く必要があったのでヘッドホンはいつも探していたのですが、自分の好みもありつつ、きちんとした正しい音を再現してくれるもの、ということで当時たどり着いたのが、K500でした。いや、当時というか、今でも使っています。

Q:AKGのヘッドホンが気に入った点はなんでしたか。

T.T:音そのものというよりは、やはり音に対する考え方だと思います。あとは値段的なこと。そして重さ、かけ心地ですね。K500は長時間音楽を聴いていても聴き疲れしません。

Q:耐久性も?

T.T:そう思います。これはとにかく、ずっと使っています。もう20年は経つでしょうか。気に入っているので丁寧には使っていますが、この耐久性はすごいと思います。

演奏の背景としての「無音」のクオリティが高い。

Q:JBLには思い出などありますか?

T.T:かなり昔になりますが、以前JBLのControl 1という小さいスピーカーを持っていました。すごくきれいに、明るく、そして気持ちよく鳴ってくれました。

Q:では、今日は最新のJBLの音を聴いていただきたいと思います。この試聴室のシステムですがスピーカーはJBL Project EVEREST DD67000という最高峰モデルです。アンプとプレーヤーにはMark Levinsonをセッティングしており、本試聴室のリファレンスモデルとなります。

T.T:スピーカーがJBLなら、まず「ラプソディ・イン・ブルー」を聴いてみたいですね。

Q:(試聴が終わって)どんな印象でしょうか。

T.T:とにかく最初から、ほかのオーディオシステムとは音が全然違いました(笑)。何が違うかって言ったら、この音には、きちんと「無」があるんです。例えば画家が絵を描くときに、キャンバスって真っ白じゃないですか。それと同じく、このシステムで聴く音楽はちゃんと「無」から始まっているんですね。なにか下地があったら、その色に染まっちゃいますから。このシステムにはまったくそれがない。ですからこれは音として、非常に正しいです。

Q:ヘビーメタルの有名なギタリスト、イングウェイ・マルムスディーンが新日本フィルハーモニー交響楽団と共演した時に指揮をされましたね。その時のCDもご試聴くださいますか。

T.T:それならアンコールでやった曲がいいです。「ファー・ビヨンド・ザ・サン」という曲です。

Q:(試聴が終わって)どんな印象でしょうか。

T.T:録音した後でかなり本人が調整したようですね、実際にはもっとオーケストラの音量が大きくて、もっと迫力があったんですが…(笑)。

Q:ロックバンドとオーケストラのコラボ、という例は過去あったと思います。でもオーケストラのソリストとしてロックギタリストが演奏することはあまりないですよね。指揮が大変ではありませんでしたか。

T.T:それが全く問題ありませんでした。実は彼、恐ろしく耳がいいんです。ああいうレベルの人って、楽譜が読めるとか読めないとかそういう問題じゃなくて、本当に耳がいいので、ちょっとしたタイミングを自由にずらせるんです。だからオーケストラと自分とリズムの取り方が違ったらすぐに変えてきますし、僕の方がオケのタイミングを合わせてあげると、こっちを見てニヤっと笑います。凄いですよ。

Q:本当に卓越したアーティストは、ジャンルを越えて素晴らしいんですね。

T.T:そう思いました。ですから、イングウェイ・マルムスディーン以外にも、マイケル・ナイマン、ジョー・リン・ターナーなど、いろいろな方々と共演させていただいたことがあるのですが、やっぱり、本当に一流の方っていうのは、ジャンルは全然関係ないんです。本質的に音楽上のルールが共通しているので、指揮者としては非常に楽です。

オリジナルスコアで映画音楽を演奏する理由。

Q:もう一つ、映画の音楽をオリジナルスコアで演奏するプロジェクトもされていますね。そのCDをご用意しましたので、ご試聴いただけますか。

T.T:では3曲目の「アラビアのロレンス」をお願いします。

Q:(試聴が終わって)どんな印象でしょうか。

T.T:「アラビアのロレンス」はモーリス・ジャールという作曲家の作品なのですが、冒頭のこれ、音、分りますか? ティンパニーとティンバレスをユニゾンで重ねて演奏しているんです。そのあたりがこのシステムではしっかりと再生されています。

Q:映画音楽を作曲者のオリジナルスコアに忠実に演奏することには、どんな意味があるのですか。

T.T:たとえばこの「アラビアのロレンス」で言えば、モーリス・ジャールは、パリ音楽院の打楽器専攻だったんです。つまり打楽器について非常に詳しいわけです。それだからこそ「ティンパニーとティンバレスを重ねて演奏すれば砂漠の埃っぽい様子が描写できる」ということが計算できる。それによって、あの暑い、埃っぽい、渇ききった砂漠の音がするんです。オリジナルのスコアを見ていると、そういうことがいっぱい出てくるんですよ。それってすごく楽しいじゃないですか。

Q:つまり作曲者の意図が明瞭に入っているということですか。

T.T:そうです。しかもその作曲者たちの中には、本来ならヨーロッパでクラシックの伝統を継ぐべきだった才能のある人たちがたくさんいます。
それはどういうことか。1920年ごろにシェーンベルクが提唱した「12音技法※」という現代音楽の流れが生まれたことで、いわゆるヨーロッパの古典音楽はいったん解体されてしまいました。そして、その後ヨーロッパの伝統音楽を再構築しよう、という時期にちょうど第二次大戦があり、才能ある作曲家たちがヨーロッパからいなくなってしまったのです。みんなアメリカに行ってしまいました。そしてアメリカで映画音楽をやった人が多いのです。
たとえば「エデンの東」の音楽を手掛けたローゼンマンという作曲家。彼はシェーンベルクの弟子なんです。ですからアカデミックな12音技法を使った曲がちゃんと書けるんです。事実「エデンの東」の中には現代音楽の作品といっていい曲が入っています。「エデンの東」の一番最初のところは、12音技法のような曲で始まっているんですよ。

Q:オリジナルのスコアには、ヨーロッパの伝統を継ぐ優れた才能の作曲家の意図が反映されており、よくある「お手軽アレンジのスクリーンミュージック」とは違う、ということでしょうか。

T.T:その通りです。それと別の角度で言えば、こういった映画音楽って音楽的に非常に優れていたとしても、当時の映画は音質が悪いし、役者さんのセリフも被っていますから、その作品は音楽として決していいコンディションでは聴けないわけです。それだったらオリジナルのスコアでオーケストラがしっかりと演奏したら楽しいのではないか、と思ったんです。私はベルリンフィルでずっと指揮者の研修をしていて、彼らの中で演奏をしたこともありますが、もしカラヤンが指揮するベルリンフィルがこういった優れた映画音楽を演奏したら、どんな音がしたのだろう、と想像することがあります。それって聴いてみたいじゃないですか。だから、自分で是非やりたいと思っているんです。

オーケストラを、もっと進化させたい。

Q:竹本さんの活動を拝見すると、オーケストラでヨーロッパの伝統音楽だけを演奏することとは、違う発想のアプローチをなさっているように思えます。どうしてでしょうか。

T.T:中学の頃に指揮者に憧れて、実際に指揮者になったわけですが、もともと僕は普通のサラリーマンの子ですし、家でクラシックばかりを聴いていたわけではありませんでした。指揮者になるためにクラシックの勉強をしながら、普通にロックも聴いていました。ですからジャンルにこだわらないのは、自分としては普通の感覚なんですが、クラシックの世界ではあまり普通ではなかったようです(笑)。

Q:ジャンルにとらわれずに「オーケストラの魅力を伝えている」とうことでしょうか。

T.T:「オーケストラ」という演奏形態は、とてもいい音がしますし、僕は大好きです。それは絶対外せない。でもオーケストラで表現できる音楽は、まだまだいっぱいあるのではないか、と思うんです。ゲーム音楽だってそうだし、今、映像と一緒に映画音楽をやっていますが、映像と画像をシンクロさせることも、技術的にはすごく大変ですけど、やりがいがあります。

Q:クラシックだけではオーケストラはもったいないですか?

T.T:そこは考え方でしょうね。ベートーヴェンやマーラーといった偉大な作曲家の作品をもっともっと掘り下げるという方向はもちろん正しいことだと思うし、これからも人類がやっていくべきことだと思います。でも、それだけなの?という話になれば、僕はそうじゃないと思っています。オーケストラには、まだまだ可能性があると思うのです。表現は難しいのですが、いい意味でオーケストラをもっとエンターテインメントにしたい。「エンターテインメント」という言葉を使うと「芸術性はなくてもいいのか?」という話になりがちですが、そういう意味ではなく、もっと広い意味でオーケストラは最高のエンターテインメントの一つだと思っています。熟練した音楽家が100人近く集まり演奏しますから、楽譜の音、例えば同じドの音でも、誰かと誰かが重なっている。誰かはオクターヴで演奏している。弦の人数によって表現力も変わりますし、指揮者によっても変わります。ですから一つの曲でも、無限の可能性があるわけですよね。今はこれだけ時代が進んで、音楽も大きく進化しています。ですから大きな可能性を秘めているオーケストラも、もっと進化すべきだと思います。

Q:最後に、この試聴室はご予約いただければどなたでも試聴いただけるようになっています。竹本さんから、ここに来られる方にメッセージをいただけますか。

T.T:オーディオって、普通は音量を上げるとうるさくなりがちですが、このシステムは腰が据わったまま音が大きくなります。これは凄いと思います。
今日僕が感じたのは、同じ曲でも音量が変わるだけで、こんなに緊張感が変わるのか、ということ。ゼロからスタートして、音量が変わると、曲の印象も、世界観もどんどん変わってきます。音楽と自分との距離感も変わってくる。ですから再生の音量とは「自分との音楽との会話」なんですね。とても背の高い人相手と話をするのか、小さな子と話をするのか。目線も違えば話し方や印象も変わってくる。ここではそのような体験が楽しめると思います。僕はすごくびっくりしました。皆さんもぜひ、いつも聴き慣れたCDをこの試聴室にお持ちになって、音量による音楽の印象の変化を試してみてほしいと思います。

竹本泰蔵 Profile

神戸市生まれ。1977年に開催されたカラヤン・コンクール・ジャパンでベルリンフィルを指揮し第2位入賞。カラヤン氏に招かれ、ベルリンを中心に研鑽を積む。帰国後、全国の主要オーケストラに客演し、好評を博している。
オペラ、バレエ、ミュージカルなどの舞台作品にも積極的に取り組み、各メディアでの活躍も多い。またNHK連続 テレビ小説「さくら」、映画「機動戦士Zガンダム」等の映像作品や、キングレコードの映画音楽CD「シンフォニック・フィルム・スペクタキュラー」シリーズなどのレコーディングにも多数参加。
クラシックはもとより、オリジナルスコアによる映画音楽のコンサートや、ゲーム音楽コンサート「PRESS START」など、今までにないミュージックシーンを展開する一方、ロックギタリストのイングヴェイ・ヨハン・マルムスティーン、作曲家・ピアニストのマイケル・ナイマン、ヴォーカリストのジョー・リン・ターナー、「シェルブールの雨傘」のミッシェル・ルグラン、また、徳永英明、渡辺美里、河村隆一など、ジャンルを超えたアーティストと共演も数多い。
近年では、演奏に映像をシンクロさせたコンサート、往年の名作映画を取り上げた「クラシック名画座」や、アニメーションを取り上げた「アニメ・コンチェルト」などを企画。単にイメージ映像を演奏に合わせるのではなく、映像が生演奏にシンクロする構成で“音楽と映像の融合”ともいえるその手法は、オーケストラ・コンサートの新しい楽しみ方として全国各地で好評を博している。

※12音技法
12平均律にあるオクターブ内の12の音を均等に使用することにより、調の束縛を離れようとする技法であり、無調の音楽である。西洋音楽が築き上げてきた「調性」に基づく音組織を否定している。オーストリアの作曲家アルノルト・シェーンベルクの「五つのピアノ曲」作品23で1921年に完全に体系化したとされる。

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締切:2014年11月17日(月)正午(AM 12:00)
当選者の発表は商品の発送をもって代えさせていただきます。

次回予告 次回の“Artist Interview@試聴室”はジャズピアニストの桑原あいさんにご登場いただきます。ご期待ください。

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