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特集 2014.10.1UP | Artist Interview@試聴室 Vol.2

ヴァイオリニスト川井郁子 Ikuko Kawai

ホールの空気の音まで聴こえてきます。

クラシックだけでなくポップスやジャズも弾きこなし、「100年の音楽」(テレビ東京系列)などテレビ・ラジオでも活躍中のヴァイオリニスト川井郁子さんが、忙しい合間を縫ってHARMAN Storeの特別試聴室を訪ねてくださいました。好きだったCDのお話や試聴室のサウンドチェック、そしてこれからのことなどをうかがいます。

Q:川井さんが初めてオーディオを買ったのはいつですか。

川井郁子(以下I.K):自分で買ったのは大学に入ってひとり暮らしを始めた時ですね。

Q:音楽大学の学生さんは、家でもクラシックばかり聴いているのでしょうか。

I.K:それが、意外と家でクラシックは聴かないんです。自分が習っている曲は勉強のために聴きますけど、それ以外は弾き手の気持ちになってしまうので、聴くと疲れてしまうんです。むしろ頭が切り替わるポップスや民族音楽をよく聴いていました。

Q:ポップスというとたとえば?

I.K:当時流行っていた、ホイットニー・ヒューストンとか、ポリスとか。ポリスの『見つめていたい』は大好きでしたね。

Q:JBLについての思い出はありますか。

I.K:「JBLというスピーカーがある」ということを知ったのはやっぱり大学の頃でした。立派なお宅に行くとあるイメージ(笑)。たとえば音楽好きな方が家を新築したら、そこにJBLを置くのが夢、というふうに聞いていました。でも今日のこの立派なJBLのスピーカー(JBL Project EVEREST DD67000)を置くのだとしたら、よっぽど広い部屋でないとダメですね(笑)。

Q:今までで特に思い出に残るレコードやCDはありますか。

I.K:私がヴァイオリンを弾きたい、と思ったのは小学校1年生の時でした。ラジオでマックス・ブルッフのヴァイオリン協奏曲を聴いて、それでヴァイオリンに憧れて、私もヴァイオリンが弾きたいと思いました。習い始めるとチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲が、もう本当に大好きになって。親にレコードを買ってもらいました。このレコードはもう何度も、何度も繰り返して聴きました。たしかA面がメンデルスゾーンでしたね。ヴァイオリンはアイザック・スターンでした。彼のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を何百回、何千回と聴いたせいで、それが私にとってのスタンダードになって、他の方の演奏を聴くと違和感を覚えるほどになってしまいました。

Q:最近ではどんな音楽を聴きますか。

I.K:今は気軽に音楽をかける、ということはあまりありません。どうしてもプロの耳で聞いてしまって、聞き流せないので。結局無音が一番休まります。ただ、私は子供の頃から「音楽で別の世界に行く」という時間は必要で、その時には音楽を聴いています。

Q:「別の世界に行く音楽」とはどうものですか。

I.K:無心で聴いていると、私を別の次元に連れて行ってくれる音楽。どこかにトランスできる音楽なんです。決まったジャンルはありませんが、頭で作った音楽や、洗練された音楽ではないですね。スティングやビョーク、ヴァンゲリスとか。近未来的で無機質な音と原始的なものが交じった音楽が多いです。

これはヴァイオリンを弾いているときに私が聴いている音です。

VICTOR ENTERTAINMENT

Q:今、この試聴室にはJBLのProject EVEREST DD67000とMark Levinsonのアンプ、CDプレーヤーがセッティングされています。川井さんのCD「The Melody 〜100年の音楽〜」と「Violin On Ice」をご用意しましたので、試聴していただいてもよろしいですか?

I.K:この2枚は録音のしかたが違うので聞き比べると面白いかもしれませんね。まず「Violin On Ice」の1曲目の「ホワイト・レジェンド(チャイコフスキー作曲「白鳥の湖」より) 」をお願いします。

→ ホワイト・レジェンド(チャイコフスキー作曲「白鳥の湖」) 試聴

Q:(試聴が終わって)どんな印象でしょうか。

I.K:やはり家で聴いている音とは違いますね、全然(笑)。和太鼓の音が凄くて……。低音がとても自然によく出ています。それとヴァイオリンの音が、奏者の耳の位置で聴く音がしています。ヴァイオリニストって、肩と首で楽器を支えますから、ものすごく耳の近いところでヴァイオリンの音を聴いているんですね。今聴いた音は、いつも私が自分で弾いて聴いているヴァイオリンの音、それにとても近いです。
このアルバムはレコーディングスタジオでの録音なんです。私はストラディバリウス※1というヴァイオリンを使っているのですが、ストラディバリウスは普通のヴァイオリンより倍音がかなり強く鳴るので、レコーディングの時にマイキングには苦労するんです。たいていは普通のレコーディングよりマイク位置が遠いのですが、それでもヴァイオリンを弾いている時に私がいつも聴いている音がしています。

Q:では次は「The Melody 〜100年の音楽〜」をおかけします。

I.K:こちらも1曲目の「So In Love」をお願いします。

→ So In Love 試聴

Q:(試聴が終わって)どんな印象でしょうか。

I.K:本当に贅沢な音ですね。この音で、いろんなシンフォニーを聴いてみたいです! こちらはスタジオではなく、ホールを借りてのレコーディングだったのですが、やはり先ほどのスタジオ録音とは音場が違いますね。楽器の音がとてもリアルに鳴っているのに、同時に場の音、上質な空間の音も聞こえます。なんだか最高の鳴り方がするホールの一番いい席で聴いている感じ。レコーディングエンジニアの方がかなりこだわって録音してくださったのですが、その方が目指していた音が本当によくわかります。このアルバムでは「神奈川アートホール」「稲城市立iプラザ」という2つのホールを使い分けました。ひょっとしたら録音場所の違いも分かるかもしれません。今の曲は神奈川アートホールで録音したものでしたので、別のホールで録った曲を聴かせてもらえますか。

Q:では「リベルタンゴ」はいかがですか。

I.K:そちらは「稲城市立iプラザ」で録音したものですので、ちょうどいいと思います。

→ リベルタンゴ 試聴

Q:試聴が終わって)いかがでしょうか。

I.K:凄いですね。いろんな音が聞こえてきますね。いろんな角度から楽しめる音です。

Q:リベルタンゴという曲が持っているスピード感、疾走感を強く感じました。

I.K:楽器のリアルな音もするし、ホールの空気の感じもする、でも会場の音や空気感は、やはりさっきとは違う音場です。本当にそのコンサート会場にいるみたいですね。凄いです。

ピアソラが私の音楽を自由にしてくれた。

Q:今リベルタンゴの演奏を聴かせていただきましたが、ピアソラにはかなり影響を受けたそうですね。

I.K:ピアソラ※2との出逢いは、私にとって、とても大きなことでした。ピアソラの音楽と出逢ったのは、すでに芸大を卒業した後だったんですが「自分はこれからプロとして、そしてアーティストとして存在することに本当に意味があるのだろうか」ということを考えていた時期でした。
というのも当時のクラシックは「作曲家の意図を正確に再現するのが演奏家の役割である」とされており、すでに偉大な演奏家たちの素晴らしい演奏も数多くレコーディングされ、残されているわけです。「それなら私が弾かなくてもいいのではないか?」と感じたりしていました。同時にポップスの仕事も始めていて、それも弾いていてとても楽しいのですけれど、ここでも「私でなくてもっていいのでは?」と思って。いつのまにか自分が「器用なヴァイオリニスト」になっていて、音楽に対して無気力になっていました。それに当時、ステージが怖かったんです。今じゃ考えられないですけど(笑)。そんな時に聴いたのがピアソラだったんです。ピアソラの音楽を聴いて、すべての答えを教えてもらった気がしました。

Q:それはどんな「答え」だったのでしょうか。

I.K:「音楽はジャンルではない」ということです。ピアソラの音楽はタンゴでありながら、全くタンゴではないことは一聴瞭然です。タンゴを基にしながら、彼がそれまでに吸収したいろんなジャンルの音楽が合わさっており、それは頭で考えたり、戦略的に作られた音楽ではなく、彼の中の必然から生まれた音楽。彼の中で、音楽をあのように融合するのは必然なんです。ピアソラに出会ってから急にワクワクしてきて。私も音楽家として、そういう風に歩んでいきたいと思いました。

Q:必然的なジャンルのミクスチャがピアソラの魅力なのでしょうか。

I.K:そうですね、単にジャンルを超えていることだけでなく、彼の音楽の中には正反対のモノが混在しています。たとえば「熱いものと、クールなもの」とか「男性的なものと、女性的なもの」とか。ピアソラにはその両極が必ず混在しているし、私は、その「両極端のものの共存」にピアソラの一番の魅力を感じます。

Q:川井さんは演奏以外にも、映画やTVなど映像作品のための作曲、テレビやラジオへの出演、さらに「川井郁子 Mother Hand基金」などの社会的活動まで、多岐にわたる活動をなさっています。それらはピアソラの音楽にある「ミクスチュア性」と関係があるのでしょうか。

I.K:ありますね。ピアソラも「あんなのタンゴじゃない」などと人に批判されたりしながら、でも彼自身は気持ちが趣くままに音楽をやってきたわけです。ピアソラがそうやって彼自身のスタイルを見つけたように、私も自分なりの表現のスタイルを発見しようとしています。こういうことって頭で考えていても発見できないので、実際にいろいろやってみるしかないんですけどね。ピアソラから学んだのは「自分にしかできないことをやる」ということ。そうでないとアーティストとしている意味がないぐらいの勢いで、私はピアソラを理解しました。ピアソラが私を自由にしてくれたんだと思います。

和楽器ともクロスオーバーもしてきたい

Q:今後の活動や、これから目指していきたいことなどがあったら教えてください。

I.K:秋から3世代の方に楽しんで頂けるツアーが始まりますので、ぜひ聴きに来ていただければと思います(詳細はこちら)。それと今後の方向性で「自分でしかできない音楽」ということで言えば、私、実は和楽器への思いがあって、自分で曲を作るときも和楽器を必然として入れたくなることがあるし、作曲したときには全く和をイメージしていなかったのに、完成してみたら実は和楽器が似合う曲だった、ということが結構あります。たぶん自分から自然に出てくるリズムの中に和楽器的な要素があるんですね。来年はパリでの公演も予定していますので、そういった「和」のジャンルの楽器ともクロスオーバーもしてきたいと思っています。

Q:最後に読者の方へメッセージをお願いします。

I.K:HARMAN Storeさんの特別試聴室で聴く音楽は、本当に贅沢でした。この環境で音楽が体験できるのは素晴らしいことだと思います。私自身、今日ここで自分のアルバムを聴いて、新たな発見がいろいろありました。みなさんがいつも聴いているCDをお持ちになって聴いてみても、今まで聴こえてこなかった音が聴こえてきたり、いろんな発見があると思います。なかなか味わえる環境ではありませんので、ぜひ予約していただき、この最高の音を体験してみてください。音楽がもっと深く楽しめると思います。

Q:本日はありがとうございました。

川井郁子 Profile

香川県生まれ。東京芸術大学卒業。同大学院修了。現在、大阪芸術大学(芸術学部)教授。国内外の主要オーケストラをはじめ、世界的コンダクター、チョン・ミョンフンや世界的テノール歌手ホセ・カレーラスなどと共演。さらに ジャンルを超えてジプシー・キングス等のポップス系アーティスト、バレエ・ダンサーのファルフ・ルジマトフ、熊川哲也、フィギュアスケートの荒川静香らとも共演している。
2008年ニューヨークのカーネギーホール公演にてアメリカデビュー。
2013年、映画「北のカナリアたち」で第36回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。
社会的活動として「川井郁子 Mother Hand 基金」を設立。国連UNHCR協会国連難民親善アーティスト、日本ユネスコ国内委員会委員を務める。

<レギュラー番組>

テレビ東京系「100年の音楽」
毎週金曜日 夜10時54分〜夜11時00分
(BSジャパン 毎週木曜日 夜9時54分〜夜10時00分)
ニッポン放送「川井郁子ハートストリングス」
毎週月曜日〜金曜日 朝8時20分〜8時24分

使用楽器:アントニオ・ストラディヴァリウス(1715年製作、大阪芸術大学所蔵)

注1:
ストラディバリウス
ヴァイオリンの代表的な銘機。イタリア北西部のクレモナで活動した弦楽器製作者アントニオ・ストラディバリが製作した史上最高の弦楽器。非常に高価で芸術品のように扱われているが、音としてもストラディバリウスでしか出せない魅力的な音がある。クラッシック音楽愛好家の間では「ストラッド」と呼ばれている。

注2:
ピアソラ
アストル・ピアソラ(1921〜1992)。卓越したバンドネオン奏者でありタンゴの革命児。タンゴにジャズやクラシックの要素を融合し、ダンス音楽に過ぎなかったタンゴに高度な音楽性を持たせた。ヨー・ヨー・マ、ピエール・ランパル、ダニエル・バレンボイムなど超一流のクラッシック演奏家たちがピアソラのタンゴをレパートリーに加えている。

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<こちらの受付は終了しました>

締切:2014年10月15日(水)正午(AM 12:00)
当選者の発表は商品の発送をもって代えさせていただきます。

次回予告 次回の“Artist Interview@試聴室”は指揮者の竹本泰蔵さんにご登場いただきます。ご期待ください。

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